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五味氏の宝物



春本コレクター小説
 ひょんなことで助けた老人が、春本・春画のコレクターだった。膨大な“悪書”をめぐって起こる男たちの珍騒動。謎めいた美女もからんで、図書館司書は落ちつかない。第5回小谷剛文学賞候補作。


喜多川歌麿:床の梅より


       ●作品評
 今月最も愉快な小説は、といって同人雑誌でこのレベルの快作にめったに出会うことはない。よみものめいた面白さにはちがいないが、この良質のユーモアにはすてがたい味がある。
 春本収集の変わりもの五味氏が側溝に転落したのを助けたことから、図書館司書の主人公は、五味氏秘蔵の生涯かけて蒐集したおびただしい性にかかわる本を拝む機会を手にする。しかし五味氏の急逝による後始末にかり出され、それからの明け暮れは五味家出入りの美しい女性との恋愛までからみ、悠揚せまらぬ風格の主人公の高校時代の恩師只野先生、いかがわしい酒場のマスターなど出現して話題の展開も巧みなら、行文、会話もたいへん気がきいていて、なかなかの出来栄えであった。
           
            文学界1995.12 同人雑誌評ベスト5 大河内昭爾氏

 側溝の底で身動き出来ず、泥まみれで助けを求めている男の登場ぶりからして、上手い誘い込み。面白く読んだ。件の宝物が、頼みにした「選別の暇」もあらばこそ、「何でもぶちこんでパルプに」されてしまう始末も、愉快である。「離合集散は宇宙の摂理」なぞと嘯いている語り様は達者なもので、もっといろいろと書いてもらいたい。こっちが「小説新潮」の編集者ででもあったら、飛んでいって頼むところだが、と正直思った。文学賞なぞとは無縁な、凝り性の筆。
                               第5回小谷剛文学賞選評  進藤純孝氏


  青空文庫読書新聞 ちへいせん 青空文庫の名文名言-32 五味氏の宝物



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新刊案内 本篇は2006年8月、柏艪舎から発刊の『われらリフター 佐野良二ユーモア作品集』に収録されています。
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