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士別の女性による読書グループ“籠”

「闇の力」読書会


 「闇の力」あらすじ
 ぼく(邦夫)は農業を手伝いながら、士別高校の夜間定時制に入学します。実直な木崎、不良っぽい上原、清純な准看生の真野ら、さまざまな生徒たちと関わり、ひたむきに働き、学びます。しかし冷害凶作、イモチ病、先輩のしごきや他校生との喧嘩など厳しい現実の中で、せっかく心の触れ合いを得た木崎の死、上原の退学に直面し、思いを寄せる真野を貧しさゆえに自ら断念、何一つ得るところなく卒業していきます。

 話し合い
――作品に出てくる地名、学校、農村風景など、私たちの住んでいる郷土・士別が舞台なので親近感を覚えました。農家生まれの私は、農繁期の光景、農機具の一つ一つから当時の生活が思い出されました。
――四季の移り変わりの農作業の様子、4年間の夜間高校の二つの調和が上手に取り入れられていると思いました。
佐野 農家というのは春夏秋冬が毎年同じ。春には田植えをし、夏には草取り、秋には稲刈りをして穫り入れ、冬になれば山へ出稼ぎにいく。1年目を書くと、あとは毎年同じパターンでは単調になってしまう。4年間をどう変化させて書くか、構成に苦労しましたね。夜間高校も同じ、編年体ながら4年4章では長すぎる。そこで木崎、上原、真野との出逢いと別れという形にして3章立てにしました。
――最近の子供と違った内面的な厳しさ、肉親の優しさが伝わってきました。第1章の終わりのくだりで、木崎の死の場面がすごかったです。
佐野 渡辺淳一さんに札幌のパーティでお会いしたとき、木崎の死は本当にあったことか、と問われました。しかし、これは全くの作りです。作りの方がリアリティが出ることもあるんですね。
――「闇の力」の題名の意味を知りたい。農業、夜間高校、社会とのつながりの厳しさをテーマにした重さを感じました。そして自分との対比を投げかけています。
佐野 題名は、夜間高校ですから当然「闇」の世界。闇は先が見えない、自分の青春というものも見えない。見えないけれども闇から何かを得ていくしかない。そういう意味合いです。題名が大げさだという審査員もいたそうですが、八木義徳さんが、いや、この題でいい、と言ってくださったと聞きました。
――湖畔のキャンプで、真野に水を汲んでやる瑞々しいシーンが印象的。士高生の頃、朱鞠内キャンプをしているので、思いも強いものがありました。真野のモデルは実在したのですか。
佐野 そのことはあまり触れないでいただきたい(笑い) 。恋のシーンは甘くならないよう、徹底して辛く書こうと心がけました。
――朱鞠内ダム工事でタコ部屋労働者がずいぶん人柱になったという話を聞いたことがあります。
佐野 そこのところをもう少し踏み込んで書くべきだったかと思っています。李恢成さんにもっと闇の部分を描いてほしかったと指摘されたのは、そういう意味と思います。
――作品を読んでいて、主人公と佐野さんがダブってきました。私も夜間高校へ通いましたので、「ぼく」の気持ちがよくわかります。
佐野 確かに体験に基づいて、地形、時代背景はほぼ事実。ただストーリーは作っています。登場人物も最初は実在する人物を想定しましたが、書き進むうちにみんな自分の分身になってしまったような気がします。主人公にとって、夜間高校は社会的に何のメリットもなかった。就職できたわけではなし、前途に光明を見いだすこともできなかった。ただ苦しんだ4年間です。けれどもこの人間は今後どんな状況になっても耐えて生きていくだろう、そういう予感を残したいと思いました。終章の卒業生に対する担任のはなむけの言葉「トレーニングは終わった……」は夜間高校に対する私の実感を話させました。
――森の梟の鳴き声と、真野を思う抑えきれない主人公の内面的な情感が苦しいほど伝わってきました。
佐野 実際にはあの場所は林なんですが、深い闇を表現するために森を設定しました。梟もあんなところにいるとは思えませんが、心情を象徴するイメージとして使ったのです。

 今回は、作者・佐野良二さんをお招きし、書き手の視点からも作品をとらえることができました。ありがとうございました。
                         
読書グループ“籠”例会 1994.11 (“籠”記録No.5)

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